米粉フォーラムの実践を活かしさらなる拡大を

 3回目となる米粉フォーラムは、全国各地から約200人の参加をいただき、成功裏に終えることができました。今回は政務多忙の中、筒井信隆農水副大臣をはじめ、ジャーナリストとの高野孟氏から講演を、さらに各分野の代表の方々から実践的な報告をいただきましたが、いずれも「これまで以上に内容が濃く、各地の実践は大いに参考になった」とか「全国に様々な取り組みが拡がっていることを実感し、勇気づけられた」など多くの皆様から力強い感想をいただきました。紙面を借り厚くお礼を申し上げます。

 

 昨年の開催は3・11大震災の直前でした。あの歴史的にも未曾有な巨大複合大震災は、食料供給基地・東北の様相を一変させました。あれからはや1年半を経過したわけですが、今だ復興の道筋は見えず、苦悩の中にある現地を訪ねる度に、あの大震災は我々に何を警告し、何を教え、何を転換することを迫っているのか、深く考えざるをえません。

 

 作家の五木寛之さんは著書の中で「闇が深さを増し、時代は地獄に向かって劇的に近づきつつあるようです。経済も政治も世の中も崩れいく時代だ」と指摘しています。確かに、これまで私たちが生命よりもひたすら成長や効率を追い求めてきた経済・社会システム、文明史的価値観、さらには支え合いや助け合いが希薄化してしまった地域社会―これら足元を見つめ直し、大胆な過去との決別、政策の転換がなければ、この国は崩れゆくかもしれません。

 

 最近の国会論戦を見ていると、この国をどうするのか座標軸がなく、まさに国家の崩れを予感させます。今大事なことは、目先の利害でなく、30年、50年先の我が国の姿を展望し、未来を考え現在を生きること、そして持続可能な社会を後世に繋いでいく責任を、政治も国民も自覚し合うことではないでしょうか。とりわけ命の源である食料の安定確保と、それを支える農業・農村の再生は世界を見ても国内的にも喫急の課題であります。TPP推進など全く論外です。

 

 私たち国内産米粉促進ネットワークでは「米粉の推進を通じて疲弊しつつある農家を元気づけ、日本農業を再生していこう。そして新しい食文化の創造を」を合言葉に活動をしてまいりました。その根底にあるのは、世界遺産とも言うべき我が国の優れた水田機能を活かし、子々孫々につなぎ、自給率を可能な限り高めたい、いわば水田活用新時代の幕開けです。今日微細粉の米粉がつくれる製粉技術の革新により、小麦粉で作れ米粉で作れないものはないという状況になりました。パン、麺、各種ケーキ、餃子、プリン、ソース類と多様であります。

 

 もう一つは、新しい粉食文化の創造です。我が国に米粉が導入されたのは平安時代の初期、中国から臼が入って以降と言われ、古くから日本にもアジアにも米粉文化があったわけです。今日でも中国のビーフン、ベトナムのフォー、インドの蒸しパンなどは日常食です。しかしわが国は戦後のMSA協定によるアメリカの余剰小麦受け入れ以来、粉食は小麦中心となりました。最近経済危機のイタリアで伝統的な食材や食文化を見直すスローフード運動が勢いを増していると言われますが、我が国でも米粉の特性を活かした商品を拡げ、日本らしい粉食文化を創造しようではありませんか。

 

 幸い米粉のもつしっとりした美味しさや、ヘルシーでアミノ酸バランスがよいとか、油の吸収が少ないなど機能性が評価され、消費は徐々に拡がっています。学校給食でも39%の学校で米粉パンや麺を取り入れ好評です。

 

 しかし大きな問題は、米粉用米の生産意欲は政策支援もあって高まっていますが、需要が追いつかず需給ギャップが拡大していることです。産地での在庫は積み上がり取引価格は低下、販売先確保に苦戦しており、一段の商品開発努力と全国的な需要喚起の大きなうねりをつくらなければ、20年度までに50万トンを達成するという目標の1、2合目辺りから息切れに陥りかねません。

 

 今後持続的な発展を図るためには、米粉の価格、流通、加工、大胆な需要拡大策等の総合的な検討と新たな政策支援のあり方が問われます。一方、民間としても新商品開発や販路拡大の多様な取り組みを一層強めなければなりません。私達キャップネットとしても、今回のフォーラムでの実践を活かし、或いはこれを起爆剤に、草の根的な運動を一層盛り上げたいと思っています。

 

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