Healthy Column

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和食の知られざる世界

第1回 自然の偶然が生んだ和食の原点 前編

世界で稀にみる日本列島の形

日本を世界ランキングで見ると

国土面積は、地球の陸地面積の約0.28%で 第60位、

 

と小さな島国ですが・・・

 

排他的経済水域を含めた面積は、 第6位 !

 

南北に細く、その海岸線は約35,558kmで、 第6位 !

 

国土の68%を森林におおわれ、

国土面積に占める森林面積の割合は、  第2位 !

日本の最北端から最南端までの距離は3000Kmもあり、

年間平気温で15度、海表面の平均温度で20度の差があります。(海表面温度の差は、ハワイからアラスカまでの差と相当します)。

 

国土を東西に分ける屋台骨のような山地や山脈が連なる山国でもあり、

そのような地形は世界でも稀。

活火山は世界の7%もあります。

 

 

海は、世界の北限のサンゴ礁と世界南限の流氷を擁し、

高低差も1000mを超す深海が8割も占め、4つの海溝は1万メートル級です。

 

4つのプレートが集まる地殻変動が激しい日本は、

火山活動やプレートとプレートのぶつかり合いによって

地形がひだのようにたくさん寄せられたり、

引き込まれたりして、

山や谷の造成が現在も進行中です。

単純に考えても、

のっぺりした平地よりも

深いひだが寄せ集まったような複雑な場所にこそ、

様々な生物がたくさん棲めることが想像できますが、

 

さらに、

南北の長さや海岸線の豊かさ、

気候や海流などの変化が様々な風土を生み、

生物の数や種類は世界最多級の宝庫になっています。

それは食糧資源の豊富さにも直結します。

バラエティーに富む日本の食資源や食文化の所以です。

実際に、

植物は、 5000~6000種類、

動物の固有種は、 131種類

と どちらも世界でトップクラス。

 

海洋生物の種類は、

約3万4千種類で世界最多!

世界の海の生物23万種のうち

約14%が日本の海に暮らしています。

 

また、水深5千メートル以深の海水保有体積は、世界第1位 !

陸の近くにも深い海があり、近海でホタルイカなど深海の魚介類が獲れるのは日本だけ。

 

ちなみに世界で一番深い海に生息できる

「深海クサウオ」という魚も日本海溝で見つかったそう。

指1本に軽自動車を載せるくらいの重さがかかるような深海で、軽やかに体を動かすことができる深海クサウオの生態は、謎に包まれています。

日本には深海というフロンティアも存在することになります。

偶然が生んだ【黒潮】と【親潮】の恵み

 

日本の海には様々な生き物が回遊・生息し、世界屈指の漁獲高や豊富な種類を生んでいます。

 

そのひとつの大きな理由は黒潮と親潮です。

【黒潮】は、幅100㎞の世界一大きな海流です。

赤道であたためられた海水が、

風の向きや地球の自転で西向きの海流となり、

フィリンピン諸島にぶつかり北に向きを変え、

日本の太平洋に注ぎ込こみます。

途中で黒潮から分かれた対馬海流は日本海に流れます。

黒潮は、まるで海のハイウェイのように、

様々な生き物を南から北へ向かって日本に運びます。

 

たとえば、

様々なサンゴが南の海から運ばれ、日本のサンゴは400種と豊富。

それはグレートバリアリーフにも匹敵するほどだそう。

サンゴの種類が多いと魚の種類も増えます。

 

でも、

もしフィリピン諸島がなかったら・・・

もし海流が北に向きを変えられなかったら・・・

黒潮は日本には来ていなかったのかもしれません。

 

【親潮】は、日本の太平洋を北から南へ向かって流れ、

北の海の栄養豊富な冷たい海水を運んできます。

特に、植物プランクトンの生育に必要な鉄が、

アムール川河口から流氷の流れによって千島列島まで運ばれてきます。

その千島列島の真ん中に1か所だけあいている

深さ2000mの切れ込み部分から

アムール川の水が日本の太平洋に流れ込んでくるそう。

そのお陰で、鉄は親潮にバトンタッチされ、

その親潮から鉄をもらった植物プランクトンは爆発的に増え、

その植物プランクトンを食べる動物プランクトンも増え、

その動物プランクトンを食べる小魚も増えることができ、

その小魚を食べる中型の魚が増え、大型の魚が増えというように

食物連鎖で次々に生き物が増えていきます。

 

でも、千島列島の深い切れ込み部分がなかったら・・・

植物プランクトンの数は激減していたかもしれません。

潮と潮、森と海が出会う奇跡の海

 

そして、

【潮目】、黒潮と親潮が出会うところは特別です。

この黒潮と親潮が出会う 三陸沖は、

世界三大漁場の1つと言われるほどに、

豊かな水産資源に恵まれています。

潮目では、あたたかい海水と冷たい海水がぶつかって

深海の栄養も巻き上げられるので、

さらに植物プランクトンが爆発的に増えます。

 

親潮とぶつかった黒潮は、蛇行した部分がちぎれ、

丸いひとかたまりの渦のような形になることもあり、

その形に沿って植物プランクトンが増えると、

その渦は宇宙から確認できるほどはっきり見えるそう。

植物プランクトンの猛烈な勢いをあらわすマークのようですね。

 

偶然日本に流れ込んできた黒潮。

偶然北の海から栄養を運んできた親潮。

偶然と偶然が出会い、奇跡の海をつくっていたのですね。

 

ちなみに植物プランクトンの生育に必要な鉄は、

日本の森からも供給されます。

国土の68%を占める森から長い海岸線に向かって

たくさんの川が森の栄養を海に運びます。

日本の森と川と長い海岸線は、

まるで効率よく豊かな海を育てる

理想的なデザインのようにも見えてきます。

(「出典は後編の最後に掲載。」)

次回に続く

執筆者プロフィール
NPO法人国内産米粉促進ネットワーク常任理事
NPO法人農都会議理事
トル―・エコライフ株式会社代表取締役
健康・環境ライター、ヨガインストラクター、食剤師

環境や健康ジャンルの雑誌記事などを20年以上担当。
小麦粉製品を長年食べ続けて体調を崩した経験から
米食中心の食事スタイルを心掛けている。

フリーライター
中村いづみ